簿記試験について
[商業簿記]
期末残高試算表と決算修正事項等にもとづいて、損益計算書を作成する問題です。この種の問題は、これまでもたびたび出題されているので受験者にとっては取り組みやすかったと思われますが、成績は必ずしも良いとはいえませんでした。多かった誤りは次のようなものでした。
1.商品に関する事項については、仕入債務および売上債権の各勘定間の関係が理解されているか否かを問うたものです。A品の仕入単価の計算を誤り、期末商品棚卸高を正解できなかった答案が多くありました。
2.有価証券に関する事項については、満期保有目的債券に償却原価法(適用する為替相場は期中平均レート)を適用したうえで、さらに決算時の為替相場にもとづいて期末時価を算定し、帳簿価額との差額を為替差損に計上しますが、これを間違えた答案が多く見受けられました。
なお、為替差損益については、買掛金について生じた為替差益を見落としたものが目立ちました。
3.リース資産については、年金現価係数を利用すれば簡単に解答できるはずですが、支払利息および減価償却費の計算のケアレスミスが目につきました。
4.貸倒引当金については、長期貸付金に対する前期の引当額が正しく計算できるか否かがポイントでした。期末残高試算表上の貸倒引当金は、この長期貸付金に対するものと売上債権に対するものとの合計額である点に注意が必要です。また、長期貸付金に対する貸倒引当金の減額分は、利息の調整たる性格を持つので受取利息に加算する方法によるとしましたが、この点を無視して貸倒引当金戻入としたものが散見されました。
5.将来減算一時差異に対する法人税等調整額の計算ができなかったものが多かったのは意外でした。また、この場合の法人税等調整額は「法人税、住民税及び事業税」から控除すべきであるのに、逆に加算した答案が多く見受けられました。
簿記の資料請求はTACからどうぞ
[会計学]
第1問
本問は、各文章の空欄に適切な語句を記入する問題です。
1.最近では、連結決算を重視する時代となってきましたが、連結財務諸表は多角化された企業グループを単一の会計単位とみなし、総合的な財務情報を提供するものであるので、一方で、セグメント別の財務報告の重要性が増してきます。セグメント別報告では、事業の種類別とともに所在地別の売上高及び営業損益等の開示が要求されます。
2.一般的な企業が、その営業活動上で利用する目的で保有する土地・建物は、固定資産の部の有形固定資産に記載されます。しかし、不動産販売会社が販売目的で保有する不動産は、その業種にとっては商品・製品に該当します。そのため、販売用の土地・建物は、流動資産の部に記載されます。土地・建物も保有する目的により、貸借対照表上の記載区分に違いが生ずる点に注意が必要です。
3.予測不能な陳腐化や不適応等により、当初の見積り耐用年数や残存価額を変更し、過年度の減価償却不足額を修正する会計手続は、臨時償却と呼びます。
4.費用収益の対応形態には、個別的に因果関係が把握できるケースと、それが不可能なケースがあります。前者を個別的対応といい、後者を期間的対応といいます。
第2問
本問は、「一株当たり当期純利益」を計算させる問題でした。1級「会計学」で初出の設問であったため、戸惑いを感じた受験者も多かったと思います。しかし、財務諸表の実際の利用において、一株当たり当期純利益の概念は、きわめて重要な概念であり、会計情報システムにより提供される大切な情報であり、この指標についての適切な理解が求められます。初めて出題するテーマなので、前提条件は極めて平易な設定としたつもりです。潜在株式調整後一株当たり当期純利益の算定にあたっては、転換社債型新株予約権付社債が、普通株式に転換された場合、株式数の増加に伴う一株当たり当期純利益への希薄化効果を考慮することが必要になります。
第3問
本問は、金融商品会計におけるデリバティブ取引およびヘッジ会計に関する問題であり、第2問と同様に初出の設問でした。デリバティブ取引のなかでも、金利スワップ取引のケースを取り上げました。第2問と同様に、取引の内容は、できる限りシンプルなものとしました。また、デリバティブとは直接関係のない、その他有価証券の期末評価替および当該有価証券の売却の仕訳についても問う設問にしました。今後は、ある程度複雑な金融商品会計に関する問題も出題される機会も多くなるかと思います。これらの領域についても、しっかりとした正確な知識を持ってほしいと望みます。
簿記の資料請求はTACからどうぞ
[工業簿記]
今回の問題は、修正パーシャルプランの標準原価計算において、標準が不適当な場合の原価差異の追加配賦の問題です。標準が不適当なため、比較的多額の原価差異が生ずる場合、当年度の売上原価と期末における棚卸資産に科目別に配賦することになっています(原価計算基準47参照)。「標準原価差異を追加配賦するさいには、追加配賦して得られた各関係勘定の期末残高が可能な限り実際原価に一致するように追加配賦する」という指示により、原料の種類ごとに原料受入価格差異、原料消費量差異を計算する必要があります。差異の追加配賦を正確に行うため、原料受入価格差異は、原料消費量差異にも追加配賦する必要があります。
さらにこの問題では、第1工程と第2工程で単位が変わっており、それを適切に処理できるかどうかがポイントです。第1工程の完成品はkgで、第2工程の完成品は個でカウントされます。第2工程の完成品1個を作るのに、第1工程完成品が1.5kg必要です。したがって、例えば第2工程における期末仕掛品の標準原価を計算する場合、第1工程の完成品1.5kgを完成させるのに必要な標準原価を計算する必要があります。また第1工程においては、原料1と原料2の2種類の原料があるため年間生産量の当期投入のところの10,000kgというのは第1工程完成品10,000kgを作るのに必要な原料という意味であり、原料1と原料2の投入合計という意味ではありません。
簿記の資料請求はTACからどうぞ
[原価計算]
本問は、予算利益差異を分析させる問題となっています。特に貢献利益に焦点を当て、その差異分析を問うています。しかし、本問の意義をその計算的側面からのみ理解することは適切ではありません。出題範囲に目を向けるだけでなく、出題形式に注意する必要があります。
計算的側面だけで本問の意義を理解するなら、本問は、各差異を計算させるだけの問題として出題しても同じであったことになります。しかし、もし単に差異を計算させるだけの問題として出題していたなら、本問は高得点が続出したでしょう。計算的側面だけから見れば、本問は1級問題として非常にやさしい部類に入るからです。しかし残念なことに、実際には決してできが良くありませんでした。そのできの悪さは、ある用語が答えられなかったとか、ある差異の計算ができなかったとかいうことでなく、差異分析の構造が理解できていなかったことに起因しているようです。
第110回1級工業簿記の問題に続いて、会話形式で問うことにより、単なる計算問題ではなく、経営管理者が何を知りたがっているのか、あるいは、何を知る必要があるのかを判断させたうえで、そのために適切な分析を行わせることが、本問の大きな特徴です。意外にできが悪かった背景には、なぜ差異分析を行うのか、このような差異分析は何のために行うのかといったことを考えることなく、ただひたすらに計算方法のみを機械的に覚えていたからではないでしょうか。
原価計算や工業簿記のように、企業の内部経営管理に役立つことを主眼とした簿記会計においては、単に指示された方法で処理できるというだけでは、ほとんど何の役にも立ちません。簿記会計が必要とされている状況や目的に鑑みて、適切な方法を選択し、必要があれば新たな方法を開発することさえ、簿記会計の担当者には期待されています。
学習過程においては暗記も必要、パターン化も不可欠です。しかし、実務において学習成果を生かすためには、問題状況を想定して自分で考える学習も必要となります。「これは覚えた。それも覚えた」で終わるのではなく、そこからさらにステップ・アップした学習が始まるのだということを理解していただきたいと思います。
簿記の資料請求はTACからどうぞ
|
|
 |
| PR |
資格の学校TAC
資料請求はこちら |
|
|
|
|